ガイシというものを知った。タモリの旅番組、ブラタモリで。なんだかそれで、気づきがあったので、書いておこうと思う。ガイシは磁器で出来た電線に使う道具だ。水分が無いので、電気を遮断することができるという。
一個何百円かの、地味で丈夫な道具だ。何十年も、電線をまとめたり、引っ張ったり、実に地道に働いている。
ところが、同じ磁器として、有田焼がある。というか、ガイシは有田焼として、作られている。美術品ではなく、価値も低く、大量生産されている。
材料は同じものなのに、その在り方の違い。
もしも、自分が磁器だとして、有田焼に生まれたいか、ガイシに生まれたいか。
つい先日まで、(おそらく50年くらい)私はずっと高級な有田焼に生まれたかったろう。
人間だって、スポーツやアートや音楽で、脚光を浴びてみたいものだ。その欲があると、なかなか抜けられないものだ。
だが、やっと私は、ガイシとしての満足を得た。
人間で言えば、世の中にどうしても必要な地味な、きつい仕事をしている。雨風に耐え、何年も過ごし、特に脚光を浴びることはない。
ただ、上の方で、電柱から伸びた電線を身体に巻きつけている。下を歩く人々を見たり、とまる小鳥達の振動を感じながら、昼間は陽を照り返し、夜は闇に包まれる。暑い日も、寒い日もある。
少し原始的になったのかもしれない。
やっと少しまともな人間になったのかな。